はじめに:年金だけで暮らせるの?
「年金だけで老後は暮らせるの?」
この質問を、日々の相談の中でよく耳にします。
物価上昇や医療費の増加、介護の心配…。将来の見通しがつかない中で、多くの方が「年金生活のリアル」を知りたいと思っています。
私は、作業療法士・認知症ケア指導管理士・相続終活専門士・FPとして、医療・介護・お金の現場に関わってきました。
今回は、その経験を踏まえて「年金だけで本当に暮らせるのか?」を分かりやすく試算していきます。
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老後の生活費はいくら必要?
まずは、総務省の「家計調査(高齢夫婦無職世帯)」の最新データを見てみましょう。
- 平均支出:約27万円/月
- 平均年金収入:約22万円/月
つまり、毎月およそ5万円の赤字になる家庭が多いということです。
年間にすると約60万円。30年間の老後を考えると1,800万円の不足になります。
これが、いわゆる「老後2000万円問題」の背景です。
ただし、生活スタイルは人それぞれ。
- ゆとりある生活:月30〜35万円
- 平均的な生活:月25〜27万円
- 質素な生活:月18〜20万円
自分がどの水準を目指すかで、必要な老後資金は変わってきます。
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年金はいくらもらえるの?実際の受給額を知ろう
公的年金の平均受給額は次の通りです。
- 国民年金(自営業など):約5.7万円/月
- 厚生年金(会社員夫婦):約22万円/月(夫婦合算平均)
つまり、国民年金のみの方は生活がかなり厳しく、厚生年金世帯でも“ゆとりある暮らし”には届きにくいのが現実です。
📌 チェックポイント
自分の年金額は「ねんきん定期便」や「ねんきんネット」で確認できます。
将来のシミュレーションを行い、受給開始年齢(60〜75歳)を調整することも可能です。
例えば、受給を70歳まで繰り下げると42%増額されます。
健康状態や働ける期間を踏まえて、受け取り方を戦略的に考えましょう。
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医療・介護費は想像以上に大きい
現場でよく感じるのは、「医療・介護費は想定よりも大きい」ということです。
高齢になると病気の通院や薬代、そして介護費用が家計に大きく影響します。
- 医療費:平均で月1〜2万円
- 介護費(要介護3相当):月5〜15万円
- 住宅維持費(修繕・固定資産税など):年10〜20万円
特に、認知症や介護状態の長期化は家計を圧迫する大きな要因です。
私が現場で関わった方の中には、「介護費で年間100万円以上かかった」というケースも珍しくありません。
💬 専門家の視点から
「介護が必要になった時に、どこで・誰と・どのように暮らすか」を早めに考えておくことが、結果的に経済的な安心につながります。
健康寿命を延ばすことこそ、最大の“老後資金対策”ともいえるのです。
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年金だけで足りない分をどう補う?
不足分を補うためには、大きく4つの方法があります。
① 退職金や貯蓄の取り崩し
退職金や預貯金を上手に取り崩すには、「年間いくら使えるか」を決めておくことが大切。
目安は取り崩し率3〜4%/年。長寿リスクを考えると、資産を急激に減らさない設計が安心です。
② iDeCo・つみたてNISAで備える
現役世代なら、節税しながら老後資金を作れる制度を活用しましょう。
長期・分散・積立の3原則で、時間を味方につけることがポイントです。
③ シニア世代の再就職・在宅ワーク
「健康で働けるうちは、少しでも収入を得る」ことも選択肢。
週2〜3日のパートやオンラインの仕事など、無理のない働き方を取り入れることで、年金の赤字をカバーできます。
④ 固定費の見直し
保険・通信費・サブスクなど、意外と無駄が多いのが固定費。
FPの視点では、保険の入りすぎ・住宅ローンの繰上げ返済タイミングなどを見直すだけで、月1〜2万円の節約になることもあります。
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相続・終活の視点で考える「お金の残し方」
老後資金を考えるとき、つい「どう増やすか」「どう使うか」に目が向きがちですが、
大切なのは『どう残すか』という視点です。
- 遺言書やエンディングノートで意思を残す
- 相続トラブルを防ぐために財産の棚卸をしておく
- 認知症になる前に「任意後見契約」や「家族信託」を検討する
これらの準備をしておくことで、本人も家族も安心して老後を迎えられます。
お金の整理は「亡くなる前」ではなく、「元気なうち」に始めるのが鉄則です。
まとめ:年金+αで「安心できる老後設計」を
結論として、「年金だけで暮らす」ことは最低限の生活は可能でも、
「安心して暮らす」ためには、やはり年金+αの備えが必要です。
老後の不安を減らすための3ステップ
- 自分の年金額を把握する(ねんきんネットで確認)
- 生活費を“見える化”する(家計簿アプリやFP相談を活用)
- 医療・介護・終活の備えを始める(制度を早めに理解)
老後のお金の不安は、数字で整理すれば「見通し」に変わります。
そして、健康・人とのつながり・住まいの安心がそろえば、年金生活も決して暗いものではありません。
「お金」と「心」の両方の安心をつくることが、豊かな老後への第一歩です。
