「最近、外出するのが面倒になった。」
「歩く速度が遅くなった気がする。」
「人と会う機会が減ってきた。」
このような変化を、「年齢のせいだから」と見過ごしていませんか?
実は、こうした小さな変化はフレイルの始まりかもしれません。そして、フレイルは認知症とも深く関係していることが、多くの研究でわかってきています。
フレイルとは?
フレイルとは、加齢によって心身の働きが少しずつ低下し、健康な状態と介護が必要な状態の中間にある段階をいいます。
フレイルには次の3つの側面があります。
① 身体的フレイル
- 筋力が低下する
- 歩く速度が遅くなる
- 疲れやすくなる
- 体重が減る
② 心理・認知的フレイル
- 物忘れが増える
- 意欲が低下する
- 気分が落ち込みやすい
③ 社会的フレイル
- 外出の機会が減る
- 人との交流が少なくなる
- 趣味や地域活動をやめてしまう
これらはそれぞれが影響し合い、悪循環を生み出します。
フレイルと認知症は深くつながっています
認知症は、ある日突然始まる病気ではありません。
「歩くことがおっくうになった」
「人と会うのが面倒になった」
「食事がおろそかになった」
そんな日々の積み重ねが、身体機能だけでなく脳の働きにも影響を及ぼす可能性があります。
近年の研究では、フレイルのある人は認知症を発症するリスクが高くなることが報告されています。
反対に、フレイルを予防・改善することは、認知症予防にもつながると考えられています。
リハビリの現場で感じること
私は20年以上、病院や介護施設、在宅で多くの方のリハビリに携わってきました。
その中で強く感じるのは、「歩けなくなったから外出しなくなる」のではなく、「外出しなくなったことで歩く力も考える力も低下していく」というケースが少なくないということです。
例えば、退院直後は元気だった方でも、「転んだら怖いから」と家にいる時間が長くなると、歩く距離が減り、人と話す機会も少なくなります。
すると、筋力だけでなく意欲も低下し、「今日は何曜日だっけ?」という場面が増えてしまうことがあります。
もちろん、すべての物忘れが認知症につながるわけではありません。しかし、身体・心・社会とのつながりが弱くなることは、認知機能にも影響を及ぼす可能性があります。
だからこそ、私はリハビリの中で「生活そのものを整えること」が大切だと考えています。
今日からできるフレイル予防
フレイル予防は、難しいことではありません。
まずは次のようなことから始めてみましょう。
- 毎日20~30分程度歩く
- たんぱく質を意識して3食しっかり食べる
- 家に閉じこもらず、外へ出る機会をつくる
- 家族や友人と会話する
- 趣味や地域活動を続ける
- 十分な睡眠をとる
- 定期的に健康診断を受ける
これらは、身体だけでなく脳への良い刺激にもなります。
おわりに
認知症予防というと、「脳トレをしなければ」と考える方が多いかもしれません。
しかし、本当に大切なのは、元気に歩き、しっかり食べ、誰かと笑って話し、自分らしい生活を続けることです。
フレイルは、早く気づけば改善できる可能性があります。
「最近少し体力が落ちたかな」と感じた今こそ、ご自身の生活を見直す良い機会です。
健康寿命を延ばすために、今日できることを一つずつ始めていきましょう。
参考文献
- 世界保健機関(WHO)『Risk Reduction of Cognitive Decline and Dementia: WHO Guidelines』2019.
- Livingston G, et al. Dementia prevention, intervention, and care: 2024 report of the Lancet Standing Commission. The Lancet. 2024.
