はじめに
「健康寿命」という言葉をご存じでしょうか。
健康寿命とは、介護や医療に大きく依存することなく、自分らしい生活を送ることができる期間のことです。
健康寿命を延ばすためには、運動や食事、睡眠が大切だと言われています。しかし、作業療法士として約20年間、多くの方と関わってきた経験から感じるのは、それだけでは十分ではないということです。
私は最近、病院や在宅リハビリの現場から、就労移行支援・生活訓練の分野へ転職しました。
この経験を通して改めて実感したのが、「仕事」は健康寿命と深く関わっているということです。
作業療法士が考える「作業」とは
作業療法士がいう「作業」とは、仕事だけではありません。
食事をすること。
家事をすること。
趣味を楽しむこと。
地域活動に参加すること。
家族との時間を過ごすこと。
人が生活の中で意味を感じる活動すべてが「作業」です。
もちろん、その中には「仕事」も含まれます。
仕事は収入を得るためだけではなく、生きがいや社会とのつながり、自分の役割を感じる大切な作業なのです。
働くことは心と体を元気にする
リハビリの現場では、「仕事に復帰したい」という目標を持つ方は、驚くほど意欲的になる場面を何度も見てきました。
仕事という目標があることで、
- 朝起きる習慣が整う
- 外出する機会が増える
- 人と話す機会が増える
- 生活リズムが安定する
- 体力や集中力の維持につながる
など、多くの良い変化が生まれます。
働くことそのものが、心と体のリハビリになることも少なくありません。
仕事を失うと、失うのは収入だけではない
一方で、病気やケガ、退職などによって仕事を離れると、
「何のために起きればいいのかわからない」
「誰とも話さなくなった」
そんな声を耳にすることがあります。
失われるのは収入だけではありません。
- 社会とのつながり
- 自分の役割
- 生きがい
- 達成感
- 人との交流
こうした「心の健康」を支える大切な要素も失われることがあります。
だからこそ、仕事を辞めた後も、新しい役割を見つけることが健康寿命には欠かせません。
就労支援の現場で感じること
現在、私は就労移行支援・生活訓練の現場で、障害や病気があっても「働きたい」と願う方々を支援しています。
利用者さんと接していて感じるのは、多くの方が「仕事がしたい」のではなく、「社会の役に立ちたい」「自分らしく生きたい」と考えていることです。
就職はゴールではありません。
働き続けられること。
安心して相談できること。
自分らしく生活できること。
それこそが、本当の支援なのだと日々感じています。
健康寿命を延ばすカギは「役割」
作業療法では、「役割」は健康に大きな影響を与えると考えます。
役割とは、仕事だけではありません。
- 家族を支えること
- 孫の世話をすること
- 地域活動に参加すること
- 趣味を続けること
- ボランティアをすること
人は誰かの役に立っていると感じることで、生きる意欲が高まります。
その積み重ねが健康寿命の延伸につながるのです。
終活は「仕事」を見つめ直すことでもある
終活というと、相続やお墓の準備を思い浮かべる方が多いかもしれません。
しかし私は、「これからどう生きるか」を考えることも終活だと思っています。
今の仕事は自分に合っているのか。
定年後はどんな役割を持ちたいのか。
働けなくなった時、どんな生活を送りたいのか。
こうしたことを考えることは、人生を前向きに設計する第一歩です。
おわりに
私は、病院・施設・在宅・緩和ケアなど、さまざまな場所でリハビリに携わってきました。
そして現在は、就労支援という新しい環境で、多くの方の「働く」を支えています。
現場は変わりましたが、目指していることは変わりません。
それは、「その人らしい人生を支えること」です。
健康寿命を延ばすためには、運動や栄養だけではなく、「自分らしい役割」を持つことも大切です。
もし今の仕事に迷いがある方、退職後の生活に不安を感じている方は、一度立ち止まって考えてみてください。
「自分にとって、働くとは何だろう?」
その答えが、健康で豊かな人生への第一歩になるかもしれません。
