「親の介護が必要になったら、仕事を辞めなければならないのだろうか?」
「仕事を続けながら、十分な介護ができるのだろうか?」
「家族として、どこまで介護をすればよいのだろうか?」
親の介護が始まると、このような悩みを抱える方は少なくありません。
特に40代・50代は、仕事で責任のある立場を任される一方、親の介護が必要になり始める世代でもあります。
しかし、介護が必要になったからといって、すぐに仕事を辞める必要はありません。
介護保険サービスや職場の支援制度、地域の相談窓口などを上手に活用することで、仕事と介護を両立できる可能性があります。
今回は、私自身の父親の介護経験も交えながら、介護離職を防ぐために知っておきたい制度やサービス、具体的な対応方法をご紹介します。
私自身も30代で父親の介護を経験しました
私自身、30代の頃に父親の介護を経験しました。
父はがんを患っており、入院生活が長く、病院で過ごす時間が多い状況でした。
病院への面会や必要な手続き、父親の体調に対する不安など、家族として考えなければならないことは多くありました。
その頃、偶然にも私自身がアキレス腱を断裂し、仕事を休む期間がありました。
けがをしたことは決して良い出来事ではありませんでしたが、結果として、その休職期間中に父親の入院中のケアや付き添いなどに時間を使うことができました。
もし通常どおり仕事を続けていたら、同じように対応できただろうか。
仕事と父親の介護をどのように両立していただろうか。
そのように考えることもありました。
私は作業療法士として、病院や施設、在宅の現場で多くの患者様やご家族と関わってきました。
専門職として介護や医療の知識があっても、家族として介護に向き合うことは、また違った難しさがあります。
この経験を通して、改めて感じたことがあります。
介護は家族だけで頑張るものではなく、さまざまな人やサービスと協力しながら行うことが大切だということです。
介護離職とは?なぜ仕事を辞めてしまうのでしょうか
介護離職とは、家族などの介護を理由に仕事を辞めることです。
介護離職につながる背景には、さまざまな事情があります。
- 通院や入退院への対応が必要になる
- 食事、排泄、入浴などの日常生活の介助が必要になる
- 認知症による見守りが必要になる
- 仕事中も親のことが心配で集中できない
- 介護を頼める家族や親族がいない
- 利用できる介護サービスや制度を知らない
こうした状況が重なることで、仕事を続けることが難しいと感じてしまう場合があります。
しかし、仕事を辞めることで、収入の減少や将来の生活設計への影響が生じることもあります。
また、仕事を辞めたとしても、介護の身体的・精神的負担が必ず軽くなるとは限りません。
そのため、仕事を辞めるという決断をする前に、利用できる制度やサービスを確認することが重要です。
介護離職を防ぐために知っておきたい5つの制度・サービス
① 介護保険サービスを活用する
介護保険サービスは、仕事と介護を両立するための大きな支えになります。
主なサービスには、以下のようなものがあります。
訪問介護(ホームヘルプ)
ホームヘルパーが自宅を訪問し、食事や排泄などの身体介護、必要な生活援助を行います。
通所介護(デイサービス)
日中に施設へ通い、食事や入浴、機能訓練などのサービスを受けられます。家族が仕事をしている間の支援にもつながります。
短期入所生活介護(ショートステイ)
施設に短期間宿泊し、日常生活の介護を受けるサービスです。家族の仕事の都合や休息が必要なときにも役立ちます。
訪問看護・訪問リハビリテーション
医療的な管理や、身体機能・日常生活動作の維持、改善などについて専門職による支援を受けられます。
サービスの利用には、原則として要介護・要支援認定などの手続きが必要です。また、利用条件や提供内容はサービスによって異なります。
介護を必要とする方の状態だけでなく、家族の仕事や生活状況に合わせてサービスを組み合わせることが大切です。
② 地域包括支援センターに相談する
介護について何から始めたらよいのか分からない場合は、地域包括支援センターへの相談をおすすめします。
地域包括支援センターは、高齢者やその家族の生活を支えるための総合相談窓口です。
例えば、
- 親の介護が必要になりそう
- 介護保険を利用したい
- 自宅での生活が難しくなってきた
- どのような介護サービスが利用できるのか知りたい
- 仕事と介護の両立について相談したい
このような相談ができます。
また、介護保険の要介護認定を受け、必要に応じてケアマネジャーと連携することで、本人や家族の状況に合ったケアプランを検討できます。
介護が限界になってからではなく、困り始めた段階で相談することが大切です。
③ 介護休業・介護休暇を活用する
仕事を続けながら介護に対応するために、育児・介護休業法に基づく制度があります。
介護休業
一定の要件を満たす場合、対象家族1人につき通算93日まで、3回に分けて取得できます。
介護休業は、長期間にわたって自分一人で介護をするためだけの制度ではありません。
介護サービスの手続き、ケアマネジャーとの相談、家族間の役割分担など、仕事と介護を両立する体制を整えるためにも活用できます。
また、雇用保険の要件を満たせば、介護休業給付金の対象になる場合があります。
介護休暇
対象家族が1人の場合は年間5日、2人以上の場合は年間10日まで取得できます。
1日単位だけでなく、原則として時間単位での取得も可能です。
通院の付き添いや介護サービスに関する打ち合わせなど、短時間の対応にも利用できます。
介護休暇が有給か無給かは勤務先の規定によります。
なお、これらの制度には対象者や取得条件があるため、勤務先の担当部署などに確認しましょう。
④ 働き方を見直す
介護と仕事を両立するためには、必ずしも休職や退職だけが選択肢ではありません。
勤務先の制度や業務内容に応じて、次のような働き方を検討できます。
- 短時間勤務
- 時差出勤やフレックスタイム
- テレワーク
- 残業の制限
- 夜勤や深夜勤務の調整
例えば、親の通院日に合わせて勤務時間を調整したり、介護サービスを利用する時間帯に合わせて働いたりする方法があります。
勤務先に家族の介護状況を伝え、どのような働き方が可能か相談することも重要です。
⑤ 病院の相談員や専門職を頼る
私の父親のように、がんなどの病気によって入院生活が長くなる場合は、病院の医療ソーシャルワーカー(医療相談員)や退院支援担当者に相談する方法があります。
また、がん診療連携拠点病院などに設置されている「がん相談支援センター」では、患者本人だけでなく家族も無料で相談できます。
病気のことだけでなく、治療費、療養生活、仕事、退院後の生活などについて相談できます。
特に退院後は、入院中とは生活環境が大きく変わります。
退院が決まる前から、必要な介護サービスや自宅環境について相談しておくことが大切です。
介護離職を防ぐために、家族が実践したい5つの対応方法
制度を知ることに加えて、日々の介護の進め方を工夫することも大切です。
1.家族だけで抱え込まない
家族がすべての介護を行う必要はありません。専門職や介護サービスに任せられることを整理しましょう。
2.介護の役割分担を決める
通院への付き添い、買い物、金銭管理、連絡調整など、家族の中で役割を分担することで負担の集中を防ぎます。
3.本人ができることを大切にする
介護では、何でも手伝えばよいというわけではありません。
本人ができる動作や生活習慣を維持することは、本人の自立だけでなく、家族の介護負担を軽くすることにもつながります。
4.身体機能や生活動作の低下を予防する
歩行能力や立ち上がり、トイレ動作などが低下すると、家族が介助する場面が増えることがあります。
安全な範囲で身体機能や日常生活動作を維持することが大切です。
5.介護する家族自身の生活も大切にする
仕事、休息、趣味、自分自身の健康管理。
これらを後回しにしすぎないことも、介護を続けていくうえで重要です。
作業療法士として考える、介護離職を防ぐための支援
私は作業療法士として、病院や施設、在宅など、さまざまな場所でリハビリテーションに携わってきました。
その中で大切にしていることは、単に身体を動かせるようにすることだけではありません。
その人らしい生活を続けられるようにすること。そして、その生活を支える家族の負担にも目を向けることです。
例えば、立ち上がりが難しくなった方に対しては、筋力訓練だけでなく、椅子の高さや手すりの位置、動作の方法なども検討します。
トイレ動作が難しい場合には、身体機能だけでなく、自宅環境や福祉用具の活用も考えます。
本人が安全にできる動作を増やすことが、結果として家族の介護負担の軽減につながる場合があります。
また、介護をする家族に対して、無理のない介助方法や生活環境の工夫を伝えることも大切な支援の一つです。
スマイルコネクションができること
スマイルコネクションでは、愛知県豊橋市を中心に、豊川市・蒲郡市・岡崎市・豊田市などで健康寿命を支える活動を行っています。
作業療法士としての経験を活かし、介護が必要な方だけでなく、そのご家族の生活にも目を向けた支援を大切にしています。
主な支援内容は以下のとおりです。
- 身体機能や日常生活動作を維持するための自費リハビリテーション
- 転倒予防や介護予防のための運動支援
- 自宅での安全な動作や生活環境の工夫
- ご家族への介助方法や日常生活に関するアドバイス
- 仕事と介護の両立を考えるための情報提供
- 企業向けの介護離職防止研修やセミナー
※介護保険の認定や公的サービスの利用調整については、地域包括支援センターやケアマネジャーなどの関係機関と相談しながら進めることが大切です。
まとめ|介護のために仕事を辞める前に、相談という選択肢を
私自身、父親の介護を経験したことで、家族として介護に向き合う大変さを感じました。
同時に、専門職として多くのご本人やご家族と関わる中で、適切な制度やサービス、生活環境の工夫によって、介護の負担を軽減できる場合があることも実感しています。
介護には、それぞれの家庭の事情があります。
仕事を続けることが必ずしも正解とは限りませんし、家族の介護を大切にしたいという気持ちも尊重されるべきです。
それでも、介護を理由に仕事を辞めるか悩んだときには、一度立ち止まって考えてほしいと思います。
「仕事を辞める以外に、できることはないだろうか?」
介護保険サービスを利用する。
会社の制度を活用する。
専門職に相談する。
家族で役割を分担する。
こうした選択肢を知ることで、これからの生活が変わるかもしれません。
介護する人も、介護を受ける人も、自分らしい生活を大切にできる社会へ。
スマイルコネクションは、健康寿命の延伸と、ご本人・ご家族の安心した暮らしを応援しています。
介護予防、自費リハビリテーション、ご家族への生活支援、企業向けの介護離職防止研修などについて、お気軽にお問い合わせください。
スマイルコネクション|健康寿命サポート
公式ホームページ:https://smileconnection1985.com/
