先日、職場に高校生が職場体験に来てくれました。
高校生と話をする中で、とても印象に残ったことがあります。
一人の高校生は、将来「理学療法士になりたい」という目標を持っていました。
その子から聞かれたのは、
「学校は忙しいですか?」
「就職先はどんなところがありますか?」
「働き方はどんな感じですか?」
「収入はどのくらいですか?」
といった、とても現実的な質問でした。
もう一人の高校生は、まだ具体的にやりたい仕事は決まっておらず、「まずは大学に行こうと思っています」と話していました。
しかし、その子からも、
「社会人の平均収入ってどのくらいですか?」
「一人暮らしするには、いくら必要ですか?」
「給料から税金ってどれくらい引かれるんですか?」
という質問がありました。
この経験から感じたことがあります。
高校生のうちから「仕事」と「お金」について知っておくことは、とても大切なのではないか、ということです。
今回は、作業療法士として高校生と話した経験をもとに、「医療職を目指している高校生」と「まだ将来の仕事が決まっていない高校生」の両方に向けて、進路とお金について考えてみたいと思います。
理学療法士・作業療法士になるには?
理学療法士(PT)と作業療法士(OT)は、ともにリハビリテーションに関わる国家資格です。
簡単に説明すると、理学療法士は「立つ・歩く・体を動かす」といった基本的な身体機能への支援を得意とします。
一方、作業療法士は身体機能だけでなく、食事、着替え、家事、仕事、趣味、社会参加など、その人が「生活すること」全体を支援します。
作業療法士の場合、国家試験を受験するためには、高校卒業後に国が指定した大学や養成施設などで3年以上学び、必要な知識や技術を修得する必要があります。
学校では解剖学、生理学、運動学、心理学、病気や障害についての勉強など、多くの専門科目があります。
さらに実習や試験、国家試験の勉強もあります。
そのため、高校生活と比べれば「忙しい」と感じる人は多いと思います。
ただし、
「ものすごく頭が良くなければ無理」
というわけではありません。
大切なのは、授業を受けて終わりにせず、その日の内容を少しずつ復習する習慣をつけることだと思います。
医療職は、一度覚えれば終わりではありません。
資格を取ってからも勉強は続きます。
だからこそ高校生のうちから、「勉強する習慣」を作っておくことは大きな財産になります。
理学療法士・作業療法士はどこで働くの?
リハビリ職というと「病院で働く人」というイメージが強いかもしれません。
もちろん病院は代表的な就職先ですが、それだけではありません。
作業療法士の場合、病院、リハビリテーション施設、高齢者施設、障害福祉、子どもの発達支援、訪問分野など、さまざまな場所で働くことができます。厚生労働省のjob tagでも、病院のほか、障害者施設、障害児施設、老人保健施設、訪問分野など幅広い勤務先が紹介されています。
また、働き方も一つではありません。
病院などで正社員として働くこともできますし、訪問分野で働いたり、非常勤として複数の職場で働いたり、経験を積んでから自費リハビリや地域活動などに関わったりする方法もあります。
資格を取ることはゴールではなく、
「資格を使って、どんな人の役に立ちたいのか」
を考えることが大切だと思います。
理学療法士・作業療法士の収入は?
高校生から「給料はいくらですか?」と聞かれることがあります。
これはとても大切な質問だと思います。
仕事は「やりがい」だけではありません。
生活するためには収入も必要だからです。
厚生労働省の職業情報提供サイト「job tag」では、理学療法士・作業療法士に対応する統計上の年収として、全国で約443.6万円という数字が掲載されています。これは令和7年賃金構造基本統計調査をもとにした数値です。
もちろん、これは「新卒で443万円もらえる」という意味ではありません。
年齢、経験年数、勤務先、地域、役職、働き方などによって給与は変わります。
参考として、国税庁の令和6年分民間給与実態統計調査では、1年間を通して勤務した民間給与所得者全体の平均給与は478万円でした。
つまり、職業を考えるときには、
「資格が取れるか」
だけでなく、
「どんな働き方ができるのか」
「どのくらいの収入になるのか」
「将来的に収入を増やす方法はあるのか」
まで考えてみることも大切です。
まだ将来やりたい仕事がなくても大丈夫
職場体験に来たもう一人の高校生は、まだ具体的にやりたい仕事は決まっていませんでした。
私は、それもまったく問題ないと思います。
高校生の段階で、
「私は一生この仕事をします」
と決められる人ばかりではありません。
むしろ、いろいろな仕事を知りながら考えていけばよいと思います。
ただ、一つ高校生のうちから知っておいてほしいことがあります。
それが「お金」です。
月給25万円=25万円使える、ではない
社会人になる前に、ぜひ知っておいてほしい言葉があります。
それが、
「額面」と「手取り」
です。
例えば会社から「月給25万円」と提示されたとしても、毎月25万円がそのまま銀行口座に振り込まれるわけではありません。
給与からは、所得税や住民税、健康保険、厚生年金、雇用保険などが差し引かれます。
そのため実際に自由に使えるお金は、「額面給与」より少なくなります。
高校生にとって税金や社会保険は難しく感じるかもしれません。
最初は詳しい計算方法まで覚えなくても構いません。
まず、
「給料=全部自分が使えるお金ではない」
と知っておくだけでも十分です。
一人暮らしには、いくら必要?
社会人になって一人暮らしをする場合には、家賃だけを考えてはいけません。
家賃、食費、水道光熱費、スマートフォンなどの通信費、交通費、日用品、衣服、医療費、趣味や交際費など、さまざまなお金が必要になります。
総務省の家計調査では、2025年の単身世帯の消費支出は1か月平均173,042円でした。
もちろん年齢や住む地域、家賃、車の有無などで大きく変わります。
特に若い人の場合は、
「家賃5万円だから、月10万円くらいあれば生活できるだろう」
と単純には考えない方がよいでしょう。
実際には家賃以外にも多くの支出があります。
さらに、貯金や突然の出費まで考える必要があります。
だから私は高校生にも、
「将来どんな仕事をしたいか」と同じくらい、
「その仕事で、どんな生活ができるのか」
を考えてほしいと思っています。
大学に行くにもお金が必要
進学を考えるときにも、お金の知識は重要です。
大学では授業料だけでなく、教科書、通学費、食費、一人暮らしであれば家賃や光熱費なども必要になります。
JASSO(日本学生支援機構)の調査でも、自宅から通う学生よりアパートなどで生活する学生の方が生活費は高くなっています。令和4年度調査では、大学学部昼間部でアパート等に住む学生の学生生活費は、自宅通学より年間約48万円高いという結果でした。
進学先を考えるときは、
「行きたい大学だから」
だけではなく、
「学費はいくらか」
「一人暮らしが必要か」
「奨学金を利用するのか」
「卒業後にどのくらい返済するのか」
まで家族で話し合っておくことが大切です。
高校生の進路は「職業」だけで考えなくてもいい
高校生と話していて、改めて感じました。
進路について考えるということは、
単に「何の仕事に就くか」を決めることではありません。
どこに住みたいのか。
一人暮らしをしたいのか。
結婚や家庭についてどう考えるのか。
趣味にどのくらいお金を使いたいのか。
休みはどのくらいほしいのか。
人と関わる仕事がしたいのか。
安定を大切にしたいのか、それとも新しいことに挑戦したいのか。
こうした「どんな生活をしたいのか」を考えて、そのための仕事を考える方法もあります。
理学療法士・作業療法士を目指す高校生へ
もし今、理学療法士や作業療法士になりたいと思っているのであれば、ぜひ実際に働いている人の話を聞いてみてください。
学校のパンフレットだけでは分からないことがあります。
楽しいこともあります。
大変なこともあります。
給料や休日など、現実的な部分もあります。
それでも、
「人の生活や人生に関わる仕事がしたい」
「誰かができることを増やす仕事がしたい」
と思えるのであれば、リハビリテーションの仕事は一つの選択肢になると思います。
まだ何をしたいか分からない高校生へ
焦って仕事を決めなくてもよいと思います。
その代わり、
「世の中にはどんな仕事があるのか」
「その仕事はいくらくらい収入があるのか」
「自分が生活するには月にいくら必要なのか」
「税金や社会保険とは何なのか」
といったことを少しずつ調べてみてください。
お金を知ることは、「お金持ちになるため」だけではありません。
自分で人生を選ぶために必要な知識だと思います。
最後に―健康寿命とは、体の健康だけではない
私は今回、高校生との職場体験を通して改めて、
「若いうちから人生について考える機会は大切だ」
と感じました。
健康寿命というと、運動、食事、認知症予防などをイメージすることが多いと思います。
しかし、長い人生を考えると、
仕事、収入、お金、人とのつながり、趣味、生きがい、そして「自分がどんな生活を送りたいのか」ということも大切です。
高校生の段階ですべてを決める必要はありません。
まず知ること。
実際に働いている人の話を聞くこと。
そして、
「自分はどんな人生を送りたいのだろう?」
と考えてみること。
それが、将来の仕事を考える最初の一歩なのではないでしょうか。
今回職場体験に来てくれた高校生たちとの会話を通して、私自身も改めて「仕事」「お金」「人生」について考える良い機会になりました。
これから社会に出ていく若い人たちにも、仕事だけでなく、自分らしい生活や人生について考えてもらえたらと思います。
