親の介護が心配になったら―今からできる「5つの準備」

健康寿命

「最近、親の足腰が弱ってきた気がする」

「もし親が倒れたら、仕事を続けながら介護できるだろうか」

「介護には、いくらくらいお金がかかるのだろう」

親が高齢になってくると、このような不安を感じる方も多いのではないでしょうか。

私は作業療法士として約20年間、病院・施設・在宅で、急性期から回復期、維持期、緩和期までさまざまな方のリハビリに関わってきました。

仕事では患者さんやご家族の相談を受ける立場ですが、私自身も30代のときに父が癌になり、「患者さんの家族」という立場を経験しました。

その経験から強く感じたのは、

親の介護は、介護が必要になってからすべてを考え始めるより、元気なうちに少しだけ準備しておくことで、家族の負担を大きく減らせる

ということです。

今回は、私自身の経験も交えながら、「親の介護が心配」と感じ始めたときに準備しておきたいことをお伝えします。

私も30代で突然「親を支える側」になりました

父が癌になったのは、私が30代の頃でした。

病院で療養する時期もありましたし、車いすで自宅生活を送った時期もあります。

幸い、父は車いすを自分で動かすことができたため、身体的な介助はそれほど多くありませんでした。

そのため私も仕事を続けることができました。

しかし、身体介助が少ないからといって、家族の負担が少ないとは限りません。

食事の準備、洗濯、買い物など、それまで父が行っていたことを含め、家事全般を私が行うようになりました。

さらに入院すると、さまざまな手続きが必要になります。

転院することになれば、転院先との調整や介護タクシーの手配なども必要でした。

転院の日程についても、

「この日にしてください」

と病院側から提示されることがあります。

当然、自分の仕事や予定がありますから、

「できれば別の日にしたい」

と思うこともあります。

しかし、病院や転院先にも事情があります。

必ずしも家族の希望通りに進むわけではありません。

医療や介護の仕事をしていた私でも、自分の家族のこととなると、

「介護そのものだけでなく、生活の調整や手続きもこんなに大変なんだ」

と実感しました。

親の介護に備えて、今からできる5つのこと

では、親が元気なうちに何をしておけばよいのでしょうか。

私は、まず次の5つから始めてみることをおすすめします。

1.親の「今の生活」を知っておく

最初から介護の話をする必要はありません。

まず知っておきたいのは、親が現在どのような生活をしているかです。

例えば、

  • 通院している病院
  • 飲んでいる薬
  • かかりつけ医
  • 普段利用している銀行や金融機関
  • 保険
  • 親戚や近所との付き合い
  • 日常生活で困り始めていること
  • 家の中で危険になりそうな場所

などです。

特に大切なのは、「何ができないか」だけを見るのではなく、「今は何ができているか」を知っておくことです。

私は作業療法士として多くの高齢者の生活を見てきましたが、介護が必要になっても、本人ができることはたくさんあります。

できることまで家族がすべて代わりに行ってしまうと、本人が持っている力を使う機会を減らしてしまう場合があります。

「介護=全部やってあげること」ではありません。

本人ができることを続けながら、難しくなったところを家族や介護サービスで補っていく。

そんな考え方を持っておくと、介護に対するイメージも少し変わるのではないでしょうか。

2.「もしものとき」の希望を聞いておく

これはとても大切ですが、なかなか話しにくいテーマです。

「もし入院したらどうしたい?」

「自宅で生活できなくなったらどうする?」

「延命治療についてどう考えている?」

突然このように聞けば、親も身構えてしまうかもしれません。

ですから、日常会話の延長から始めてもよいと思います。

例えば、知人が入院した話やテレビのニュースなどをきっかけに、

「自分だったらどうしたい?」

と聞いてみるのも一つの方法です。

一度ですべて決める必要はありません。

大切なのは、親が自分の将来をどう考えているのか、家族が少しずつ知っておくことです。

本人の希望は年齢や病気、生活環境によって変わることもあります。

ですから、「一度聞いたから終わり」ではなく、時々話せる関係を作っておくことが大切だと思います。

3.お金や契約について話しておく

介護の話になると、

「お金の話はしづらい」

という方も多いと思います。

しかし、実際に親が入院したり、自分で手続きすることが難しくなったりすると、お金や契約に関する情報が分からないことが家族の大きな負担になることがあります。

私の場合、父が癌になった際、父自身が事前に「覚書」を残してくれていました。

そこには、お金の管理についての情報だけでなく、

  • 税理士
  • 葬儀屋
  • 契約関係
  • その他、家族が知っておくべきこと

などがまとめられていました。

これは本当に助かりました。

もし何も知らない状態で一つひとつ探さなければならなかったら、父のことを心配しながら、さらに大きな負担を抱えていたと思います。

ここで大切なのは、親のお金を家族が勝手に管理するということではありません。

「もし自分で手続きできなくなったとき、家族が困らないために、必要な情報がどこにあるかを共有しておく」

という考え方です。

例えば、

「大事な書類はこの引き出しにあるよ」

「保険関係はこのファイル」

「困ったらこの人に連絡して」

という程度からでも構いません。

これだけでも、いざというときの安心感は大きく違います。

4.家族だけで介護しようと考えない

親の介護を考えたとき、

「自分がやらなければ」

と思ってしまう方は少なくありません。

しかし、介護は数日で終わるとは限りません。

数か月、数年と続く可能性もあります。

だからこそ、最初から

「家族だけで何とかする」のではなく、「使える支援を使いながら生活を続ける」

という考え方を持ってほしいと思います。

介護保険サービスをはじめ、地域にはさまざまな相談先や支援があります。

「まだ介護が必要というほどではないから……」

と思う段階でも、親の生活に不安を感じ始めたら、地域包括支援センターなどに相談する方法があります。

困り切ってから相談する必要はありません。

介護は、家族だけで抱えるものではありません。

専門職や地域の力を借りながら、本人と家族の生活をどう維持するかを考えていくことが大切です。

5.介護が始まっても「自分の生活」を守る

私が父を支えていたときも、仕事を続けていました。

父自身が車いすで移動できたため身体介助が少なかったことも、仕事を続けられた大きな理由です。

それでも、家事や病院とのやり取り、手続きなどが増えると、生活は確実に変わります。

親のことが心配になると、

「できるだけ自分がやってあげたい」

と思うのは自然なことです。

しかし、介護する側にも生活があります。

仕事があります。

家庭があります。

そして、自分自身の人生があります。

介護のために家族がすべてを犠牲にすることが、必ずしも本人の望んでいることとは限りません。

だから私は、

「親の生活を支えること」と「自分の生活を守ること」を両方考えてほしい

と思っています。

介護サービスを利用することも、人に頼ることも、決して「何もしてあげていない」ということではありません。

長く支えていくための大切な選択肢です。

一番大切なのは「元気なうちに話しておくこと」

父の介護を経験して、私が特に感じたのは、

「事前に話し合っておくことの大切さ」

でした。

父が覚書を残してくれていたことで、私は父の考えや必要な情報を知ることができました。

もちろん、すべてを準備しておくことはできません。

病気や介護は、予定通りには進まないからです。

病院の都合で転院日が決まったり、急に手続きが必要になったり、家族が仕事の予定を変更しなければならなくなったりすることもあります。

だからこそ、完璧な準備を目指す必要はありません。

まずは親と話す。

そして、

「何かあったら、どうしたい?」

と聞いてみる。

そこからで十分だと思います。

「親の介護が心配」と思った今が、準備を始めるタイミング

介護について考えると、不安になるのは当然です。

「仕事と両立できるだろうか」

「自分に介護ができるだろうか」

「お金は大丈夫だろうか」

「施設に入ることになったらどうしよう」

まだ起きていないことを考えれば、心配は尽きません。

でも、今からすべての答えを出す必要はありません。

まずは、

親の生活を知る。
親の希望を聞く。
必要な情報の場所を共有する。
相談できる人や場所を知っておく。

これだけでも立派な介護への備えです。

私は約20年間、作業療法士として多くの方のリハビリや生活支援に関わってきました。

そして、自分自身も父の病気を通して、支える家族の立場を経験しました。

専門職として介護を見ることと、自分の親を支えることは、やはり違いました。

だからこそ、このブログではこれから、

「親の介護が少し心配になってきた」

という方に向けて、医療・介護・認知症・お金・終活、そして健康寿命について、できるだけ分かりやすくお伝えしていきたいと思います。

介護への備えは、親のためだけのものではありません。

親ができるだけ自分らしく暮らし、そして子ども世代も自分の生活を大切にするための準備です。

今日、親御さんと話す機会があれば、まずは何気ない会話から始めてみませんか。

「最近、体の調子はどう?」

その一言が、将来の安心につながる第一歩になるかもしれません。

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