―「健康寿命」を改めて考えた一日―
本日は、パーキンソン病に特化した施設で仕事をしてきました。
私は普段、「健康寿命を延ばす」ということについて考えたり、発信したりしています。
健康寿命というと、
「病気にならないようにする」
「運動をして体を健康に保つ」
「認知症やフレイルを予防する」
といった、病気になる前の予防をイメージする方が多いのではないでしょうか。
もちろん予防はとても大切です。
しかし今日、利用者さんと関わる中で、改めて感じたことがあります。
健康寿命について考えるのは、病気になる前だけではない。
病気になった後も、人生は続いていきます。
「どんどん体が動かなくなって、どうしたら…」
今日、ある利用者さんとの関わりの中で、
「どんどん体が動かなくなって、どうしたらいいんだろう……」
という言葉を聞きました。
パーキンソン病は進行性の病気です。
そのため、昨日できていたことが将来もずっと同じようにできるとは限りません。
歩くこと。
立ち上がること。
着替えること。
食事をすること。
外出すること。
趣味を楽しむこと。
日常生活のさまざまな場面で、少しずつ変化を感じることがあります。
「以前はできたのに」
「これからもっと動けなくなるのではないか」
その不安は、単に身体機能だけの問題ではありません。
これからの自分の生活をどうしていけばいいのか。
そんな人生そのものへの不安につながることもあるのだと思います。
「できなくなったこと」だけを見ない
リハビリテーションに関わっていると、どうしても
「筋力が落ちた」
「歩くスピードが遅くなった」
「バランスが悪くなった」
といった身体機能に目が向きます。
もちろん、それらを評価し、必要な運動やリハビリを行うことは大切です。
しかし、作業療法士として私が大切にしたいのは、
その人が何をしながら生活していきたいのか
ということです。
例えば、長い距離を歩けなくなったとしても、
近所まで自分で買い物に行きたい。
家族と外食に行きたい。
庭の手入れを続けたい。
好きなテレビを見ながら体操をしたい。
友人と会いたい。
自宅でできることは自分で続けたい。
人によって「大切な生活」は違います。
病気を治すことだけではなく、
病気があっても、自分にとって大切な生活をできるだけ続ける。
これもリハビリテーションの大切な役割だと思います。
進行性の病気だからこそ、「今からできること」がある
パーキンソン病では、運動をしなくてもよいということではありません。
現在も、運動はパーキンソン病と付き合っていくうえで重要な取り組みの一つとされています。
有酸素運動、筋力トレーニング、ストレッチ、バランス練習などを、その人の状態に合わせて行うことが大切です。
ただし、ここで重要なのは、
「頑張れば病気が治る」ということではない
ということです。
私は、
「少しでも今の動きを保つ」
「転びにくい体をつくる」
「外出する体力を保つ」
「自分でできることを少しでも長く続ける」
といった視点が大切だと思っています。
運動そのものが目的ではありません。
運動によって、
「買い物に行けた」
「家族と出掛けられた」
「自分でトイレに行けた」
「趣味を続けられた」
という生活につながること。
そこに運動やリハビリの意味があるのではないでしょうか。
「失ったもの」ではなく「残っている力」を考える
進行性の病気では、どうしても
「できなくなっていく」
という部分に目が向きやすくなります。
しかし、人には身体機能以外にもたくさんの力があります。
経験。
知識。
趣味。
家族との関係。
人とのつながり。
好きなこと。
役割。
そして、
「こう生活したい」という気持ち。
歩き方が変わっても、その人自身が変わってしまうわけではありません。
病気によってできる方法が変わったのであれば、
「以前と同じ方法で行う」ことにこだわらず、
別の方法で続けられないかを一緒に考える。
これも作業療法士としてできる支援だと思っています。
健康寿命は「病気がない期間」だけではない
一般的に健康寿命は、
健康上の問題によって日常生活が制限されることなく生活できる期間
とされています。
そのため、「健康寿命を延ばす」という言葉からは、病気を予防することが注目されがちです。
しかし、私は健康寿命を考えるとき、
もう少し広い視点を持ってもよいのではないかと思っています。
病気があっても、
自分で選べることがある。
自分でできることがある。
楽しみにしていることがある。
誰かとのつながりがある。
役割がある。
明日やりたいことがある。
そうした生活をできるだけ長く続けることも、
「健康に生きる」ということにつながるのではないでしょうか。
「どうしたらいい?」に、すぐ答えが出ないこともある
「どんどん体が動かなくなって、どうしたらいい?」
この質問に、簡単な答えを出すことはできません。
「運動を頑張りましょう」
だけでは十分ではないと思います。
何に困っているのか。
何が一番不安なのか。
今後も何を続けたいのか。
今できていることは何なのか。
どんな環境なら生活しやすいのか。
家族や周囲にどんな支援が必要なのか。
一つずつ一緒に考えていく必要があります。
そして、
「できなくなったら終わり」ではなく、できる方法を変えながら生活を続けていく。
そのお手伝いをすることが、リハビリテーションの役割の一つなのだと思います。
病気になる前も、病気になった後も「健康寿命」
健康寿命を延ばすためには、
運動する。
食生活を整える。
人との交流を持つ。
認知機能を保つ。
定期的に健康状態を確認する。
こうした「予防」はもちろん大切です。
しかし、どれだけ気をつけていても、病気になる可能性を完全になくすことはできません。
だからこそ私は、
病気になる前の予防と、病気になった後の生活の質、その両方を考えることが大切
だと思っています。
「病気にならないためにどうするか。」
そして、
「病気があっても、どう自分らしく生活するか。」
この2つは、別々の話ではありません。
どちらも、
これからの人生をどう生きるか
という同じテーマにつながっています。
今日、パーキンソン病の方と関わりながら、
改めて「健康寿命」という言葉について考えさせられました。
病気があるか、ないかだけではなく、
その人が大切にしている生活を、少しでも長く続けられること。
Smile Connectionでは、そんな視点からも健康寿命について考え、発信していきたいと思います。
※本記事は一般的な健康・リハビリテーションに関する情報と、作業療法士としての日々の経験から感じたことをまとめたものです。パーキンソン病の症状や進行、適切な運動内容には個人差があります。具体的な治療や運動については、主治医やリハビリテーション専門職等にご相談ください。
