
「健康のために運動した方がいいのは分かっているけれど、何をすればいいの?」
「毎日何歩くらい歩けば健康に良いの?」
「年齢を重ねても、自分の足で元気に歩き続けたい」
そんな方におすすめしたいのが、有酸素運動・筋力増強運動・柔軟運動・バランス運動の4種類を組み合わせることです。
健康寿命とは、健康上の問題で日常生活が制限されることなく生活できる期間のことです。
今回は作業療法士の視点から、研究結果も交えながら、今日から自宅で実践できる運動方法を紹介します。
有酸素運動|毎日どのくらい歩くと健康に良い?
有酸素運動の代表がウォーキングです。
歩くことには、心肺機能の維持、血糖コントロール、生活習慣病の予防、精神的な健康の維持など、さまざまな効果が期待できます。
科学的根拠:1日7,000歩で死亡リスクが約47%低い
2025年に医学誌『The Lancet Public Health』で公表されたシステマティックレビュー・メタ解析では、1日2,000歩の人と比較して、7,000歩の人は全死亡リスクが約47%低いという関連が報告されました。
また、認知症、心血管疾患、転倒などのリスクについても、歩数が多い人ほど低い傾向が認められています。
ただし、これは観察研究を統合した結果であり、7,000歩歩けば必ずリスクが47%減るという因果関係を証明したものではありません。
年齢別の目安
| 対象 | 身体活動の目安 |
| 成人 | 1日約8,000歩、歩行相当の身体活動60分以上 |
| 65歳以上 | 1日約6,000歩、歩行相当の身体活動40分以上 |
| 運動習慣がない方 | 現在より少し多く歩くことから開始 |
これは厚生労働省の「健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023」を参考にした目安です。歩数や時間には日常生活での活動も含まれ、連続して歩く必要はありません。
おすすめのウォーキング方法
- 最初は5〜10分程度から始める。
- 背筋を伸ばし、自然に腕を振る。
- 可能であれば、少し息が弾む程度の速さで歩く。
- 慣れたら歩く時間や歩数を少しずつ増やす。
- 買い物や散歩など、日常生活の中に取り入れる。
大切なのは、最初から1万歩を目指すことではなく、今より少しでも活動量を増やすことです。
筋力増強運動|いつまでも自分の足で生活するために
筋力は加齢や活動量の低下によって衰えやすくなります。
特に下肢や体幹の筋力低下は、立ち上がり、歩行、階段昇降などの日常生活動作に影響します。
WHOや厚生労働省では、筋力トレーニングを週2〜3日程度実施することが推奨されています。
おすすめ運動① 椅子からの立ち上がり
目安:5〜10回 × 1〜2セット
- 安定した椅子に浅めに座る。
- 足を肩幅程度に開く。
- 上体を少し前に倒し、ゆっくり立ち上がる。
- ゆっくり座る。
太ももやお尻の筋肉を鍛えることができ、立ち上がりや歩行能力の維持に役立ちます。
難しい場合は手すりや肘掛けを使用しましょう。
おすすめ運動② かかと上げ
目安:10〜15回 × 1〜2セット
- 安定した机などにつかまって立つ。
- ゆっくり両足のかかとを上げる。
- 2秒程度保持する。
- ゆっくり下ろす。
ふくらはぎの筋肉を鍛える運動です。歩行時の蹴り出しに関わる筋肉を刺激できます。
おすすめ運動③ 壁腕立て
目安:8〜12回 × 1〜2セット
- 壁に両手をつく。
- ゆっくり肘を曲げて体を壁へ近づける。
- 壁を押して元の姿勢に戻る。
胸・肩・腕の筋肉を鍛えることができます。
回数よりも、正しい姿勢とゆっくりした動作を優先しましょう。
柔軟運動|身体の動きやすさを維持する
柔軟運動は、関節を動かせる範囲を維持・改善するために役立ちます。
筋肉や関節の動きが硬くなると、着替え、靴下の着脱、床の物を拾うといった日常生活動作にも影響する場合があります。
おすすめ運動① 太もも裏のストレッチ
目安:左右20〜30秒 × 1〜2回
- 椅子に浅く座る。
- 片足を前に伸ばし、かかとを床につける。
- 背中を大きく丸めず、股関節からゆっくり前傾する。
- 太ももの裏が心地よく伸びる位置で保持する。
おすすめ運動② ふくらはぎのストレッチ
目安:左右20〜30秒 × 1〜2回
- 壁や机に両手をつく。
- 片足を後ろに引く。
- 後ろ足のかかとを床につけたまま、前膝をゆっくり曲げる。
- ふくらはぎを伸ばす。
おすすめ運動③ 胸を開くストレッチ
目安:15〜20秒 × 2回
- 椅子に座って背筋を伸ばす。
- 肘を軽く曲げ、肩甲骨を寄せるように胸を開く。
- 呼吸を止めず、無理のない位置で保持する。
ストレッチは、反動をつけずに痛みのない範囲で実施することがポイントです。
バランス運動|転倒しにくい身体づくり
高齢期では、筋力だけでなく、姿勢を保つ能力や重心を調整する能力も重要です。
バランス能力が低下すると、方向転換、段差の移動、片足での動作などが不安定になります。
厚生労働省は、高齢者に対して筋力・バランス・柔軟性などを含む多要素な運動を週3日以上行うことを推奨しています。
おすすめ運動① 片足立ち
目安:左右5〜20秒 × 2回
- 安定した机や手すりにつかまって立つ。
- 片足を少しだけ床から浮かせる。
- 姿勢を保つ。
- 反対側も行う。
不安定な場合は、両手でしっかり支持して構いません。無理に手を離す必要はありません。
おすすめ運動② 横歩き
目安:左右各5歩 × 2往復
- 安定した手すりや台に沿って立つ。
- 片足をゆっくり横に出す。
- もう一方の足を寄せる。
- 左右に移動する。
股関節周囲の筋肉を使いながら、横方向への重心移動を練習できます。
おすすめ運動③ 前後への重心移動
目安:前後各5回
- 安定した机につかまる。
- 両足を肩幅に開く。
- かかとを浮かせず、重心をゆっくり前後に移す。
- 身体が大きく傾かない範囲で繰り返す。
立位が不安定な方は、専門職に相談し、安全に実施できる方法を選びましょう。
まずは1日15分!4種類の運動を組み合わせよう
毎日すべての運動を長時間行う必要はありません。
初めての方は、次のようなメニューがおすすめです。
| 運動 | 内容 | 時間 |
| 有酸素運動 | ウォーキング | 5分 |
| 筋力増強運動 | 椅子立ち上がり・かかと上げ | 4分 |
| 柔軟運動 | 太もも裏・ふくらはぎ | 3分 |
| バランス運動 | 支持あり片足立ち・重心移動 | 3分 |
| 合計 | 15分 |
この15分は運動を始めるための一例です。推奨される身体活動量をすべて満たすものではありませんが、継続できることを優先し、少しずつ活動量を増やしていきましょう。
運動を継続するための3つのポイント
1. 小さな目標から始める
最初から高い目標を設定するよりも、毎日無理なく取り組める内容を選ぶことが大切です。
2. 日常生活と組み合わせる
歯磨きの後にかかと上げをする、テレビを見る前にストレッチをするなど、普段の生活に取り入れると継続しやすくなります。
3. 頑張りすぎない
運動中に胸痛、強い息切れ、めまいなどが現れた場合は中止してください。持病がある方、転倒リスクが高い方、関節痛がある方は、医師やリハビリ専門職と相談して運動量を調整しましょう。
まとめ|健康寿命を延ばすために大切なのは、続けること
今回紹介した4つの運動には、それぞれ異なる役割があります。
- 有酸素運動:全身持久力や心肺機能の維持
- 筋力増強運動:立つ・歩く・持ち上げる力の維持
- 柔軟運動:関節の動きやすさの維持
- バランス運動:姿勢の安定や転倒予防
ウォーキングだけでなく、筋力やバランス能力にも目を向けることが大切です。
健康寿命を延ばすための運動は、特別な器具や激しいトレーニングが必要とは限りません。
「今の自分にできることを、少しずつ、長く続ける」
それが、将来も自分らしい生活を送るための第一歩だと考えています。
スマイルコネクションでは、作業療法士の視点から、一人ひとりの身体機能や生活目標に合わせた運動・健康づくりをサポートしています。
転倒予防、筋力低下、歩行能力、日常生活動作などでお困りの方は、お気軽にご相談ください。
参考文献・資料
- 厚生労働省「健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023」
- WHO「Guidelines on Physical Activity and Sedentary Behaviour」(2020)
- Ding D, et al. Daily steps and health outcomes in adults: a systematic review and dose-response meta-analysis. The Lancet Public Health(2025)
- Banach M, et al. The association between daily step count and all-cause and cardiovascular mortality: a meta-analysis. European Journal of Preventive Cardiology(2023)
